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津地方裁判所 昭和57年(行ウ)1号 判決

三重県三重郡菰野町大字菰野字丸池六三二三番地

原告

日本油業株式会社

右代表者代表取締役

池上三千彦

右訴訟代理人弁護士

丸山英敏

菊井康夫

同県四日市市西浦二丁目二番八号

被告

四日市税務署長

高木孝一

右指定代理人

北河登

西川守也

尾崎慎

谷安生

小林茂吉

苗代穰

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  原告は請求の趣旨及び原因として別紙訴状(写)のとおり述べ、被告は本案前の申立及びその理由並びに本案の答弁及び請求原因に対する認否として別紙答弁書(写)のとおり答弁した。

二  原告が請求の趣旨記載の通知処分に対し、昭和五五年三月二四日に審査請求をなしたところ、昭和五六年二月二日付で右審査請求を棄却する旨の裁決がなされたことは当事者間に争いがなく、原告は、同裁決書が同月一二日書留郵便で原告に送付され、遅くとも二日ないし四日後に送達がなされたことを明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべく、さらに本件訴が昭和五七年一月二七日に提起されたことは記録上明らかである。

右事実によれば、本件訴は行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間を徒過してなされたものであることが明白であるところ、原告が出訴期間を徒過したことについて述べるところは(記録にあらわれた全ての資料を参酌しても)単なる原告会社の内部事情に過ぎず、民訴法一五九条一項所定の事由に該るものでないことは多言を要しない。

三  よって、原告の本件訴は出訴期間を徒過した訴として不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上野精 裁判官 大津卓也 裁判官 今泉秀和)

訴状

請求の趣旨

一 被告が原告に対して昭和五五年二月七日付でなした昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度の法人税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取消す。

二 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

一 原告は、石油製品販売業を営む会社であるが、昭和五三年四月一日から同五四年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五四年三月期」という。)の青色の法人税確定申告書に、所得金額を金一〇八、四六四、九五二円、納付すべき税額を金四二、五四五、六〇〇円と記載して法定申告期限までに申告した。その後、昭和五四年一一月一四日に昭和五四年三月期は金一八六、六〇八、五九四円の欠損金額であるとする更正の請求をしたところ、被告は、昭和五五年二月七日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

二 そこで、原告はこの通知処分に不服があるとして、昭和五五年三月二四日に審査請求をしたところ、昭和五六年二月二日付で審査請求に対し棄却の裁決がなされた。

三 しかしながら、原告の更正の請求は正当なものであり、被告が行った更正をすべき理由がない旨の通知処分には正当な根拠がなく左記理由により違法であり取消されるべきである。

(一) 原告は、その更正の請求について被告から調査をする旨の通知を受けたが、その時当時の原告会社の代表取締役であった太田良一が長期出張をして不在であったため被告と応接ができなかったのである。それにもかかわらず、原告は、被告から更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた。このように原告の更正の請求に対し、実質的な調査もしないで単に応接しなかったという理由だけでなされた原処分は違法である。

(二) 原告が提出した昭和五四年三月期の確定申告書は一部原告会社の債権者の誘いに乗り原告の意思に反して作成提出したものであり、また、原告が原処分の通知を受けた後、被告の担当統括官に面接したところ、「確定申告が間違いであることは一見して明瞭である。」との返事があり、従って、昭和五四年三月期の確定申告書については誤りがあることは明らかであるから、原処分は取消さるべきものである。

四 なお、現在の原告会社代表取締役池上三千彦は昭和五六年二月二八日原告会社を譲り受けたが、最近に至るまで前記の審査請求に対し棄却の裁決がなされたことを知らなかったものである。

五 よって、請求の趣旨記載の判決を求めるため本訴に及ぶ次第である。

答弁書

第一 本案前の申立

一 申立ての趣旨

本訴件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

二 申立ての理由

原告の本件訴えは、要するに、原告の法人税にかかる更正の請求に対し、被告が、その更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことの取消しを求めることにあるところ、原告は、被告の右通知処分を不服として国税不服審判所長に対しなした審査請求が昭和五六年二月二日付けの裁決をもって棄却されたことを知りながら、約一年近くも経過した昭和五七年一月二七日に、本件訴えを提起しているものであるから、その余の点を論ずるまでもなく、本件訴えは、行政事件訴訟法一四条一項に定める不変期間たる出訴期間三か月を明らかに徒過した不適法な訴えというほかはない。

すなわちこれを詳述すれば、右国税不服審判所長は、原告の審査請求を棄却する旨の裁決書謄本を、昭和五六年二月一二日に原告会社の代表者あてに書留郵便をもって送付しているものであるから、右郵便物である裁決書謄本は、通常到着すべきであった時に送達があったものと推定される(国税通則法一二条二項)。

したがって、右裁決書謄本は、経験則上右送付のあった日から遅くとも二日ないし四日後には原告に送達がなされ、その時点で原告は前記裁決のあったことを現実に知ったものと言うべきであるから、本件訴えは、前記出訴期間を大幅に超えた不適法な訴えとして速やかに却下されるべきである。

第二 本案の答弁

一 請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

二 請求の原因に対する認否

第一項 認める。

第二項 認める。

第三項 冒頭の主張は争う。

(一)について

原告の更正の請求に対し被告から調査をする旨の通知をしたこと及び被告に更正すべき理由がない旨の通知処分をしたことは認め、当時原告会社の代表取締役であった太田良一が長期出張をして不在で被告と応接できなかったことは不知、その余は争う。

(二)について

被告の担当統括官が「確定申告が間違いであることは一見して明瞭である。」と返事したとの事実は否認し、その余は不知ないし争う。

第四項 不知。

第五項 争う。

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